⑮群青のテーゼ

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 その声には少女ほどではないが疲れが見えた。20代のペースに一人だけ巻き込まれている二世代前の軍服には、鍛え抜かれた鋼の精神だけではどうにもならない、染みついたニコチンと加齢臭がこびりついていた。 「付いたらどーすんの?、そういえばさ、」 「まずはのろしだ。二発撃つ」 「ンで、後は待機?」 「ああ、」 「……休める?」  少女は一縷ほどの期待を込めて前に視線をずらす。ついでに後ろの初老も、大当たり三連単の顔をして視線を合わせる。 「……待機ですよ、待機」  振り向いた青髪は、すこし困ったような顔で含みを持たせる。 「動かなくて良いんだろ?」 「というか動かないでください」 「どーゆーこと? 何が違うのさ、」 「人生を "休め" とかするなって意味です」 「ねぇ、怖い! この人怖い!!」  一々ヒトを怖がらせる後出しじゃんけんのような話し方に、不気味な笑顔まで添え出す男に指をさしながら、彼女は隣で黙々と進んでいたゴリラの方をパンパンと叩いた。  ゴリラは怪訝そうな表情を浮かべたが、何も言わず溜息だけを彼女の眉に掻けて前を向いてしまった。 「なんで!?、無視しないでよ!」 「してない! こういうときはできるだけ話さないように。疲れるから」 「んにさケチ~~」  口をとがらせてはごねる彼女。似たようなやりとりはもう三回目。荷物は闘笛を除いて、すべてゴリラの肩に乗っけた。 「ソレぐらい、自分で持ちなさい」 「ぐえぇケチ~~」  キミの魂胆は見え見えだ。そうとでも言いたげな目で、彼は自分の手にいやらしく翼を引っかけようとしてくる少女の目を見た。 「ほら、あとちょっとだから」  彼はそう言って、少女の翼を今一度、ぐいと強く、前へ引っ張った。
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