⑱ ちぐはぐのそよかぜ

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 龍の口が私たちに向けて開かれたのは、その瞬間だった。 「あっっっぶ!!」  コチラも龍だ。さっきとは違う。空を蹴り飛ばし翼を投げ、そのまま型に担いだ大男を舵代わりに振り回し、とっさに軌道をズラした。  "ちゅん" と一回。自分の真()を掛ける閃光の軌道に、心拍数は限界を超えて加速していった。 「「ぐえ、ぇう」」  汚い声と共にそのまま。着陸姿勢も取れずに私たちは地面へと突き刺さる。  だってしょうがないじゃんか。まさか野生動物が落下予測して撃ってくるとは想わないじゃんか。  落ちた先の地面は、幸い大分視界も遮られている……のか?、多分目が見えてないっていってたケド。これってもしや相手側だけ見えてるヤツなのでは? 「――それなら大丈夫だ。ホラ」  私の懸念に気付いたのか、砂埃の中、ガラン君が自分の手にはめていたひしゃげたグローブをよこしてくる。 「なにこの……黒い、砂、鉄?」 「テアが纏ってたヤツさ、コレだけ待ってればヤツの目にはもう映らないだろう」 「そっか……てか大丈夫?、大分ハデにそんな砂鉄さんに向けて激突したけど」 「あぁ、ノックはされたけどね?、ちゃんとお帰り願ったよ」 「バカ、向こうに案内しなよ」 「なぁそうだ。クソッ、ミスったな」  わざとらしく舌打ちを一回。競うようにコチラも大きく一回。思わず嗤いが漏れる。 「……何が足りない?」 「力はいい。どうせ適わん。――数だな、意識をもうちょっとズラしたい」 「なるへそ――……いける~!?」  後方、蘇生を続けて居るであろうサーシャに向けて叫ぶ。 「む、むりですゴメンなさい! まだとても―― 「立ってるだけなら、どうだ?」  息も絶え絶え、疲労困憊、性別を隠すことも忘れて今にも倒れそうな少女の悲痛なメッセージは遮られた。なぜか、更に息も絶え絶え、今にも倒れ、いや、斃れそうな老爺の声だった。 「「町長!」」  意外な第一号に、二人の声がそろう。 「寝るの早ェけどな、起きるのも早ェんだ。年寄りってのはヨ……ッお?」  カッコを付けながらもけんけん脚で進む老兵の首を、問答無用でツタが締め上げる。サーシャの怒鳴り声が響く。 「無茶です! 死にます! 寝ててください!」 「いいんだよ、自分の限界なら一番よく知ってる」 「知ってたらなんで――  譲らないサーシャの唇に、ヨボヨボでボロボロの人差し指が当たって。
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