⑱ ちぐはぐのそよかぜ

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 ソコには雄叫びを上げて絶叫するノイマンと、逸れに駆け寄るガラン君、に担がれたボロボロの町長。  少し離れて奥の方、杖を振るサーシャ、彼女に抱きしめられて、今なお眠り続けるキミッヒ。  よかった。皆、無事だ。  ……いや、違うな。嘘を吐いてる。  一度目を瞑る。深呼吸を一回。  私はようやく、ソレを直視した。  口を広げ、血や臓物、羽をまき散らし、歪に潰れた龍が、テア・ブリザークはそこにいた。  間違いなくそこに居た。  想像よりもずっと細かった首に刺さるは、白銀色のねじれたレイピア。  なるほど、コレをなげていたのか。  勝った?、勝った?なのかな、コレは。  なんだろう。コレは……  今だ尚、ぐちゃぐちゃとする思考と感情。  ケド、いいんだ。いいんだもう、後で考えよう。  ゆっくり、クッキーでも囓りながら。  ぶつり。限界まで張り詰めて、赤熱していた電池が切れる音が一回。  揺れる空のうたたに任せて、深く深く息を立てた。
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