⑲あらしのあとに

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 ぶわわっと音を立てて、次の瞬間、先ほど こより の代打を務めていたヤツと同じ蝶の群れが、一斉に私の足下から飛び立っていった。 「なに?、なになに?」 「ホントに。凄いよな()()」 「ああ?、……ああ!」  ぽんと合点がいった合図の直ぐ後で、蝶達は雲すら見えづらくなった夜の中、ジワジワと溶けていった。 「……なんかキレイだね、」 「ああ、とても血で増えたとは思えん」 「言わないでよ、おばか、」    軽くけりが入る。大丈夫、軽くだから軽く。 「おぼえてくれよ、キミと違って(よろい)、ないんだから」  デカい図体で一生懸命細い脚をかばう彼が面白くて、良くない顔を浮かべてもう一発。 「こら」  割と強めな語気と共に、彼は私の頭をワシャワシャとしてくる。なんだなんだ。娘扱いか。 「……ゴメンゴメン、皆は?」 「もう下行ってるよ、」 「おいてけぼり?」 「まぁ、普通に危ないしなココ」 「え~~か弱い女の子残します普通?」 「皆ボロボロだ、しょうが無いさ。オカゲさまで自社(オレ)の株はストップ高だ」 「ぷっ、何ソレ」  オレね。オレ……変なの。  夜空と勝利にあおられて、ガラにも無くウインクまでしちゃって。なんでヒューマンの男ってこう、歌でも演奏でもダンスでもなく、不器用な格好つけがスキなんですかねホント、 「……はーあ、」 「あれ、ダサいか? 今の」 「うん。ダサい。すごく、」 「そんな! 言い過ぎだろ!」 「いいや言うよ。しっかり。キミ人前でやっちゃうだろうし」 「あぇ、……ッ、ああ! 」  ようやく理解したか、鈍い奴め。  緩んだ口元を隠して、前を歩き始めた。そんな瞬間だった。 「おー発情期はすんだか、ゴリラ」  その言葉は唐突に、背中から投げられた。 「うえぇッ! なッ誰!」 「――き、キサマはッ!」  思わず飛び退いて、そのまま折れていたことを忘れて地面に倒れ伏す私。
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