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ぶわわっと音を立てて、次の瞬間、先ほど こより の代打を務めていたヤツと同じ蝶の群れが、一斉に私の足下から飛び立っていった。
「なに?、なになに?」
「ホントに。凄いよな彼女」
「ああ?、……ああ!」
ぽんと合点がいった合図の直ぐ後で、蝶達は雲すら見えづらくなった夜の中、ジワジワと溶けていった。
「……なんかキレイだね、」
「ああ、とても血で増えたとは思えん」
「言わないでよ、おばか、」
軽くけりが入る。大丈夫、軽くだから軽く。
「おぼえてくれよ、キミと違って鱗、ないんだから」
デカい図体で一生懸命細い脚をかばう彼が面白くて、良くない顔を浮かべてもう一発。
「こら」
割と強めな語気と共に、彼は私の頭をワシャワシャとしてくる。なんだなんだ。娘扱いか。
「……ゴメンゴメン、皆は?」
「もう下行ってるよ、」
「おいてけぼり?」
「まぁ、普通に危ないしなココ」
「え~~か弱い女の子残します普通?」
「皆ボロボロだ、しょうが無いさ。オカゲさまで自社の株はストップ高だ」
「ぷっ、何ソレ」
オレね。オレ……変なの。
夜空と勝利にあおられて、ガラにも無くウインクまでしちゃって。なんでヒューマンの男ってこう、歌でも演奏でもダンスでもなく、不器用な格好つけがスキなんですかねホント、
「……はーあ、」
「あれ、ダサいか? 今の」
「うん。ダサい。すごく、」
「そんな! 言い過ぎだろ!」
「いいや言うよ。しっかり。キミ人前でやっちゃうだろうし」
「あぇ、……ッ、ああ! 」
ようやく理解したか、鈍い奴め。
緩んだ口元を隠して、前を歩き始めた。そんな瞬間だった。
「おー発情期はすんだか、ゴリラ」
その言葉は唐突に、背中から投げられた。
「うえぇッ! なッ誰!」
「――き、キサマはッ!」
思わず飛び退いて、そのまま折れていたことを忘れて地面に倒れ伏す私。
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