⑲あらしのあとに

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 大男もモチロンそうしたかったのだろうが、残念無念。強すぎるふくらはぎのせいで、真っ赤になった顔をさらすことになった。 「の、……のいまん。うらむぞ!」  下唇を噛んで情けなく顔を隠す大男の先、これ見よがしに開眼した、優男の邪悪な笑みが見える。 「おいおい、感謝しろよ。そのてやったんだからよ、」 「……いるなら一言いってくれ」 「良いのか?、株の話はウチじゃ懲罰暴だぜ」 「……協力、感謝する」 「はッ、最初からそーいい給へヨ。チミ、」  ニヤニヤを隠すこともなくひとしきりおちょくった後、彼は踵を返し、森の中へと消えていった。 「……おい、何してる!?」 「え、」 「早く来い! 土地勘ねーんだからよ!」 「あ、ああ! すまん!」  少し怒鳴り気味な彼の声に引っ張られ、急ぎ足の彼。 「ほら、アンヌ」  さも当然のように手を向けてくる。なので私も、さも当然のようにその手をとる。  なんだい。当然だろ、そうだよ。だから早く前向きなよ、気持ち悪い。  少し強めに握り返す。こけないように。こう見えてさっきまで死んでたんだから。  草木を掻き分けて進む夜の森。どこからか獣の鳴き声。前方を進む男達の足取りは重くのろく、どこかフラフラと。瀕死の千鳥足にはありがたいペースで進む。  僅かに残って居たはずの太陽が残り香も、白みを増した月明かりも、無数に茂る木の葉にくるまれて意味をなさない。   「流石にアブねえ」  そう言って脚を止めるノイマン。おもむろに袋から取り出したのは、エメラルドのあしらわれたペンダント。  何か細工をしたのか、手で "パチン" と弾いた後、合図でも送るように彼は、ソレを振りかざした。  やがてジワジワと滲むように、ペンダントは蒼く輝きだした。  ソレを見て、確かめるようにうなずくこと一回。 「ほい、頼むぞ」  そう言って私の首に彼はソレを掛けた。 「え、何?プレゼント?」 「違う。場所は言うから、危ねー所教えろ」
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