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大男もモチロンそうしたかったのだろうが、残念無念。強すぎるふくらはぎのせいで、真っ赤になった顔をさらすことになった。
「の、……のいまん。うらむぞ!」
下唇を噛んで情けなく顔を隠す大男の先、これ見よがしに開眼した、優男の邪悪な笑みが見える。
「おいおい、感謝しろよ。そのてやったんだからよ、」
「……いるなら一言いってくれ」
「良いのか?、株の話はウチじゃ懲罰暴だぜ」
「……協力、感謝する」
「はッ、最初からそーいい給へヨ。チミ、」
ニヤニヤを隠すこともなくひとしきりおちょくった後、彼は踵を返し、森の中へと消えていった。
「……おい、何してる!?」
「え、」
「早く来い! 土地勘ねーんだからよ!」
「あ、ああ! すまん!」
少し怒鳴り気味な彼の声に引っ張られ、急ぎ足の彼。
「ほら、アンヌ」
さも当然のように手を向けてくる。なので私も、さも当然のようにその手をとる。
なんだい。当然だろ、そうだよ。だから早く前向きなよ、気持ち悪い。
少し強めに握り返す。こけないように。こう見えてさっきまで死んでたんだから。
草木を掻き分けて進む夜の森。どこからか獣の鳴き声。前方を進む男達の足取りは重くのろく、どこかフラフラと。瀕死の千鳥足にはありがたいペースで進む。
僅かに残って居たはずの太陽が残り香も、白みを増した月明かりも、無数に茂る木の葉にくるまれて意味をなさない。
「流石にアブねえ」
そう言って脚を止めるノイマン。おもむろに袋から取り出したのは、エメラルドのあしらわれたペンダント。
何か細工をしたのか、手で "パチン" と弾いた後、合図でも送るように彼は、ソレを振りかざした。
やがてジワジワと滲むように、ペンダントは蒼く輝きだした。
ソレを見て、確かめるようにうなずくこと一回。
「ほい、頼むぞ」
そう言って私の首に彼はソレを掛けた。
「え、何?プレゼント?」
「違う。場所は言うから、危ねー所教えろ」
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