⑲あらしのあとに

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「ノイマンが持ってた方が……」 「バカ言うな。俺たちとアンタじゃ10倍視力が違う」 「ええ、……」  言い過ぎでは? と訝しむも、特に反論せずじっとしているもう一人にも、そういえば似たような事を言われたのを思い出す。  蒼い光を通して周囲を見渡す。いつもみたいに100メートル以上 先を見やる事は出来ないけれど、まるで花火を地面に充てたときのような小さな昼が滲んだ。 「前方段差、ヒザくらい」 「お、」 「な?」  正解だろ? とでも言いたげにコチラを指差してくるノイマン。なんか子供みたいだ。 「次、そこの木踏まない」 「木?、これか?」 「そう、腐ってるから」 「色も解んのか」 「そりゃまぁ、ガラン君こっちあるいて。墜ちるよ」 「え、ああ……」  ペンダントは様々な危険を照らしてくれる。けれど何よりも解ったのは、彼らが想像以上に何も見えていないと言うことだ。  新月とかどうするんだろう。ずっと火を焚くんだろうか。 「校外学習を思い出すな、」 「あー、特別訓練な。椅子でバリケード造って」 「知らん。田舎のヤンキーか?」 「ハァ?、つまんねーヤツだな。歯も折られたことネーだろ」 「あぁ、体罰(あいじょう)注がれるよりも、ソレ見てビール注ぐのが好きでね、」  田舎のバカ学生みたいなノリで話す二人。一々声を上げるのも疲れてきたので、死なない程度の障壁は無視しながら見守る。  自分にはみじんもないそんな "思い出" を、少しだけうらやましいだな、とか思い出したころだった。 「留まって! 火!?」  反射で叫んだ。  珍しくゲラゲラと笑っていた男の袖を、ぎゅうと握りしめる。 「モンスターか?」  少し体勢をくずしながら、ガラン君が訝しむ。目をこらす先には、ゆらゆらと無数のオレンジが浮かんでいた。 「ちげぇよバカ」  シリアスは秒で解かれる。バシンと大きな背中を叩くと、ノイマンはヘラヘラと笑いながら灯りの方へと向かっていった。 「着いたんだよ!」  駆け足で前を行く男の声を聞いた後、私たちは見つめ合った。お互い疑って、一度前を向いた後、今度は確かめあうように両の目を見つめ合った。  やつれ、あか切れ、クマがさしていた目には、みるみるうちにあふれんばかりの活力が満ちていった。 「「――ッッやった~~!!」」  情けない、天気も祈るような声だった。  ソレでも二人は子供のようにはしゃぎ合って、抱き合って。  チグハグの足取りで、ノイマンの後を追いかけていった。
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