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「ノイマンが持ってた方が……」
「バカ言うな。俺たちとアンタじゃ10倍視力が違う」
「ええ、……」
言い過ぎでは? と訝しむも、特に反論せずじっとしているもう一人にも、そういえば似たような事を言われたのを思い出す。
蒼い光を通して周囲を見渡す。いつもみたいに100メートル以上 先を見やる事は出来ないけれど、まるで花火を地面に充てたときのような小さな昼が滲んだ。
「前方段差、ヒザくらい」
「お、」
「な?」
正解だろ? とでも言いたげにコチラを指差してくるノイマン。なんか子供みたいだ。
「次、そこの木踏まない」
「木?、これか?」
「そう、腐ってるから」
「色も解んのか」
「そりゃまぁ、ガラン君こっちあるいて。墜ちるよ」
「え、ああ……」
ペンダントは様々な危険を照らしてくれる。けれど何よりも解ったのは、彼らが想像以上に何も見えていないと言うことだ。
新月とかどうするんだろう。ずっと火を焚くんだろうか。
「校外学習を思い出すな、」
「あー、特別訓練な。椅子でバリケード造って」
「知らん。田舎のヤンキーか?」
「ハァ?、つまんねーヤツだな。歯も折られたことネーだろ」
「あぁ、体罰注がれるよりも、ソレ見てビール注ぐのが好きでね、」
田舎のバカ学生みたいなノリで話す二人。一々声を上げるのも疲れてきたので、死なない程度の障壁は無視しながら見守る。
自分にはみじんもないそんな "思い出" を、少しだけうらやましいだな、とか思い出したころだった。
「留まって! 火!?」
反射で叫んだ。
珍しくゲラゲラと笑っていた男の袖を、ぎゅうと握りしめる。
「モンスターか?」
少し体勢をくずしながら、ガラン君が訝しむ。目をこらす先には、ゆらゆらと無数のオレンジが浮かんでいた。
「ちげぇよバカ」
シリアスは秒で解かれる。バシンと大きな背中を叩くと、ノイマンはヘラヘラと笑いながら灯りの方へと向かっていった。
「着いたんだよ!」
駆け足で前を行く男の声を聞いた後、私たちは見つめ合った。お互い疑って、一度前を向いた後、今度は確かめあうように両の目を見つめ合った。
やつれ、あか切れ、クマがさしていた目には、みるみるうちにあふれんばかりの活力が満ちていった。
「「――ッッやった~~!!」」
情けない、天気も祈るような声だった。
ソレでも二人は子供のようにはしゃぎ合って、抱き合って。
チグハグの足取りで、ノイマンの後を追いかけていった。
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