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ソレを目にした途端、口から汚ったない濁音がボロッと飛び出した。ひょっとしたら内蔵もいくつか出て行ったかも知れない。そう思えるほど大きな音だった。
「ま、待って、コレ違うって。開けちゃダメだって。ダメなヤツなんだって!!」
テーブルの上、表れたのは乾燥された、大量の葉っぱだった。薄い緑で身体に良さそうとはお世辞にも言えない見た目のソレからは、明らかにお茶とかに使える代物じゃない、少し変な臭いもした。
実際に目にするのは初めてだったけど、職業柄すぐ気付いた。気付いてしまった。
カニや肉ですら巻末の広告欄ですみっこぐらしを強いられる激動の昨今、植物の分際で新聞の一面を飾る、そんな代物だった。
「ご明察、オンシが太ももに付けとった、頭がスッとするヤツじゃ」
麻酔銃を食らったような口の動きと蒼白しきった顔で震える私に、地べたでもがくセミに向ける苦笑いを浮かべながら。
流石におおっぴろげはマズいのか、彼女はソレを再び布包みの中にしまった。
「……ワンチャン合法だったり?」
「アウトじゃよ、つーかこの量 密輸れちまったら首の方スッ、じゃな」
「っぎ、ギロチン残ってるのかよこの国……」
国境侵犯と脱税でオニオンスープグラタンがもらえる国と壁一枚、当たり前のように お出しされた中世の倫理観に震える私。
再び向けられる鋭い笑みに、思わず顔が引きつった。助けてもらっといてこう言うのなんだけど、このおばぁちゃん、相当性格悪いや。
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