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「で。どうすんじゃ」
「……と、言いますと?」
「もう片方の意識が戻るまで。じゃったよな、ヘクターくん?」
「欺して申し訳ありません、私はガラン・ラスタフ。卑しい資本主義のブタ共の養豚場でこっ、警備員をしておりました。」
申し訳なさそうにペコペコと頭を下げながらも、肝心なところで視線をずらした男の頭を、彼女は先ほどのスリッパで軽く『ぱこん』とだけ叩く。
「そうかそうか、みずぼらしい社会主義の犬小屋へようこそ、バカイノシシ。ただ、その牙を隠すんなら、もうちょっとガールフレンドの教育から始めるべきじゃったな」
「い、いえ、アンヌとは別にそういう関係では、」
「なっ、煉獄のハーデルト攻略に、先も知らぬ乙女を巻き込んだか! クズめ今すぐ憲兵に突き出してボンレスハムに――
「彼女です。将来を誓い合いました。指輪も買ってあります」
『バコンッ!!』
曇り無き眼で恥を知らぬスケコマシに、怒りの鉄槌が下される。シュウと煙を噴き、たんこぶを作り、ココまでは先ほどと一緒だった。しかし先ほどを越える威力の重力を受けても尚、男の意識のブレーカーが落ちることは無かった。
「頑丈じゃのう。まぁええわ、で、カス。こっからどうするんじゃ、さすがにアレ届けるっちゅうなら簀巻きにして元いたとこに返すぞ。」
「…………」
「手順一つ飛ばして土に返してやってもええぞ」
「…………」
男は何も返さなかった。いや、返せなかった。
「なんじゃ、ギロチン残っとる国が黙秘権あるとおもったんか」
「ど、どうか……せめて彼女だけでもッ、」
男は頭を下げた。いや、下げるしかなかった。
「あーもう、ええ。ま、キズが治るまでは面倒診ちゃるわ」
「っ、ありがとうございます!!」
「その代わり――終わったら働けよ」
「もちろん! ぜひ!」
「おお、そうかそうか、コレで言質はとったからな、両方」
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