①腹ペコの鳥ガール

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①腹ペコの鳥ガール

「す、すごい!!、コレなら今月どころか来月も乗り切れる!!」  目の前の掲示板に貼られた一枚の依頼書を手に取って。少しばかり鋭い、緑の瞳は輝いた。  人々が集まるメインストリートの噴水前、周りの視線を一ミリもはばからず はしゃぎ回り、小躍りなんかしちゃって。  灰かぶりのコットンみたいな銀髪と、頭一つ分くらい周りより小さい体躯、ひときわ目立つ蒼緑の翼、所せましと震わせて。  チクチクとあちこちから、少し戸惑い気味の視線が注がれる。知ったことかである。こちとら生活がかかっているのです。 「太陽の城下町、シャイノイン、オレンジ通り、三番目、青色の屋根――、了解了解にっひっひ」  書かれた住所を指でなぞりながらつぶやき、しめしめと緩んだ顔からニヤけ声を漏らしながら地図を開く。耳に挟んでいた赤ペンでトンと印をつけると、軽やかなスキップで受付へ向かっていった。  これほどまで元気な足取りはいつぶりだろうか、考えるまでも無くここ数年は思い当たる節が無い。それほどまでに私は天にも昇る気持ちだった。  ――なんせ今の私、何も知らなかったんだから。先の事なんて、  ただもうレストランの裏路地で匂いを楽しみながらパンをかじる必要も、「消費期限は切れてから本番」や「カビはスパイス」などと戦時中じみた自己暗示する必要もなくなる。それが解っただけでゴキゲンだったんですから。
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