初恋

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夕暮れ。 外ではまだミーンミーン…と セミの鳴き声が響いている。 そんな放課後。 僕はオレンジ色の夕陽が 一直線に入り込む美術室をドアの影から覗いた。 人影が見える。 美術室の中心で、1人。 たった1人で。ポツンと。 存在している彼女… 同じクラスの東堂彩華だ。 礼儀正しく椅子に座っている 彼女の視線の先には 何色にも染まっていない まっさらで真っ白な1枚の画用紙があった。 その姿に僕は一瞬。ドキリとした。 彼女がその画用紙を見つめる眼差しは とても興味深いものだった。 まるでその画用紙は実はテレビで。 何か面白いバラエティ番組でも やっているんじゃないかと疑うほどに、 楽しそうだった。 僕にはただの画用紙にしか見えないのだが とにかく何か面白い物がそこに 映し出されている気がしてならなかったのだ。
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