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頭のてっぺんにその青くかたいものが落ちてきたのは、中間テスト初日のことだった。
「ぎょびんす」
おもわずそう叫んだ。人類の誰もあげたことがない叫び声だ。たぶん。
それくらい痛かった。目ん玉が飛び出るかとおもった。ちょっと飛び出ていたかもしれない。
中間テストが三日後にせまった日、あたしはテレビに向かって大声をあげていた。
「うぉおおおお。がんばっておっきくなってやー」
まだドライヤーをあててない濡れ髪の姉ちゃんが、なにごとかと洗面所からあたしを覗いた。
「なに言うとん?」
「応援!」
「なんの?」
「熱帯低気圧! 台風になりそうらしい」
姉ちゃんの大きなため息が洗面所から漏れて、あたしの耳に届いた。姉ちゃんはあきらめたような顔をしてドライヤーの音をひびかせた。
あたしは応援を続けた。日本の南の海上に生まれたという熱帯低気圧が台風に進化して中間テストにぶち当たってくれるように。
「がんばってぇ。たのむわ、ほんまぁ」
姉ちゃんはバスタオルを首に巻いてソファにかけた。バスタオルの色は元ヤンの名残を残すピンクの迷彩柄だ。姉ちゃんはアームレストにひじをのせてあたしを見ていた。こぶしに頬をのせ、あたしへため息をまたよこした。
「虹子、お前そんなヒマあったら勉強せって。いや、マジで」
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