夢のスコップ

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 「到達点はー…ー…にある。」 男はキョトンと首を傾げた。まぁそうだろう。これは私以外に理解できない。最適な言葉のない概念だからだ。  「…」 男は尚も忙しなく動いていたが、一言も話さず辺りを見回した。  そしていく時間が経ち、女は眠ってしまっていた。観察者は何故か男から目を離せず、動き続ける男を見続けていた。  ある時、男が動きを止めた。そして観察者を見て、  「…ここはあんたにとって居心地がいいってことか?」 と聞いた。…驚いた。まさかその概念を理解するとは…それも驚くべきスピードで。  「なぁなぁ、どうなんだ?」 男は観察者を覗き込み、再び訪ねた。観察者は長い時間をかけ、ゆっくりと頷いた。男はそれを見て、さらに輝いた。そして左ポッケに手を入れ、夢でできた小さなスコップを取り出した。男はそれに好奇心、知識、才能、自分の持ちえるありったけのものを詰め込んだ。小さな夢のスコップはたちまち逞しい光るスコップになった。  「(これならば、もう遠くないだろう。)」 観察者は光るスコップを見てそう確信した。  「おぅい!起きて!!果てが見えた!!」 男はそう叫びながら女へと駆けて行った。観察者はそのまま飛び立ち、道を離れた。この道は観察者にとって、ただの道になったのだ。  男は道を作った。足の踏み場のないところには光るスコップで道を作り、大きな段差はそこら中に散らばる夢や知識の残骸で乗り越えて。    ある時観察者はその道を思い出し、何気なく訪れた。  「ほう…」 その道は以前より太くなり、多くの者で賑わっていた。どうやらこの道は今や誰もが通る道になったのだろう。  時間を忘れ、眺めていると賑わう道から外れ歩く者がいた。観察者は気になり、彼女の近くに降り立った。  「……新たな道…か。」 彼女はポッケをゴソゴソと漁り、小さな夢のスコップを取り出した。
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