【調停者】

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【調停者】

78541d0b-21f1-4608-8b56-717516cf18eb 【世界】には【管理者】が存在するのが当たり前だが。 【世界】に参入している【参入者】は【世界】内で人間として生きている間、それを忘れている。 そもそも自分が【参入者】として【世界】内へ埋没している事実すら自覚できない。 ましてや【調停者】となると、必ずしもどこの【世界】にも存在しているという訳ではないので、人間がその存在を認識する術はないのである。 だが認識されようがされまいが存在している事に変わりはない。 俺は【調停者】として【地球世界】の片隅に存在している…。 ****************** 【地球世界】の場合ーー インターネットが普及している事もあり 実の所、大勢の人間が潜在的には 「【世界】は質量を伴うVRである」 と気が付いてるだろうと思うのだ。 その事実に気が付けば 「【参入者】が【世界】に参入し『人間』として【世界】内部に生きている」 という【世界】の成り立ちに関して推測するのも難しくはない筈だ。 【世界】は幻想に満ちている。 ある意味で【世界】は 「客が金を賭けてゲームする賭場」 みたいなものだ。 風船を膨らんだ状態にしておくには内部に空気を入れておく必要があるが、【世界】が風船なら【参入者】は空気のようなもの。 電子回路の作用を有効化させるには電流を流す必要があるのだが、【世界】が電子回路なら【参入者】は電流のようなもの。 その【世界】の維持に欠かせない【参入者】達。 その存在の本質は霊魂存在である。 霊魂存在とはーー 魂核の周りに一定量以上の魂の粒子を惹きつけている形態の独立情報体の一種。 その【参入者】の質がこれまたピンからキリまで幅が広い。 驚く程に質の悪いクズな【参入者】も少なくない。 質の悪い【参入者】達による、質の悪い現実創造。 それが繰り返される事で 「【世界】が滅びる(!)」 ことさえある。 ピンからキリまである魂の質。 それらの格差・温度差が同化・平均化によって埋められ並列化していく。 そうした「魂の質の並列化」作用こそがーー 【世界】内部で【参入者】が体験する 「凡ゆる幸福や不幸の源」 でもある。 誰かが体験した幸福や不幸が 別の者達へ感染変異してパターンを変えて具現化していく。 幸福や不幸が直接化・悪辣化したり、婉曲化・無難化していく…。 そうした並列化作用に伴う体験の感染変異とバリエーション化。 その模様と重要性を【管理者】や【調停者】は熟知していなければならない。 だが必ずしも 「魂の質の並列化が完遂されるとは限らない」 のも事実である。 「クズな連中の魂と同化したくない」 と思う魂も多い。 「クズな連中を未来永劫食肉用動物に転生させる煉獄に落としてやりたい」 などといった 「激しい勧善懲悪的復讐心を抱えている」 者達…。 そんな執念深い報復者達は強固なまでにアドバンテージを社会奉仕へ注ぐ。 天使の如き善良さでノブレスオブリージュを達成しようとする。 筋金入りの報復者は「魂の質の並列化」を望まない。 堕落を望まず 俗物的幸福を望まず 転生すら望まず ただひたすらに 「人間の皮をかぶった寄生虫搾取者を滅ぼす」 事だけを乞い願う。 その激しい復讐心は外部からは見えないので そうした筋金入りの報復者達は貴石に宿る精霊(ジン)のように 正しき者へは善良に、罪人には厳しくなる。 VR内で起こる出来事など… 所詮は幻想に過ぎないのだと知っていても それでもどうしても 「人間の皮をかぶった寄生虫搾取者を滅ぼさねば気が済まない」 という復讐心が消えない。 そんな筋金入りの報復者の強固な意志こそが 「半物質を物質へ変える」 存在性変換を引き起こす鍵でもある。 激しい報復心と同化拒否。 それにより 質が良い魂は質が良いままで 質が悪い魂は質が悪いままで 強固な状態固定が起こり そうした状態固定した魂こそが 「VRに過ぎない幻想空間が質量を伴うようになる」 現象の引き金でもあるので… 【管理者】にせよ【調停者】にせよ 「強固な状態固定が起こる場合には起こるがままに任せる」 事もあるのだった…。
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