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アングラ社会の猫
ーー【月の裏側には猫が棲んでいる】ーー
と言っても物理的に、ではない。
社会のアングラ面に秘密結社的に蔓延る組織的存在が人間離れして陰湿だという事実を比喩的に表している。
俺が人間として生きていた頃はそういう猫の一人だったので実情を知っているに過ぎない。
結局のところ。
猫が猫で居続けるには
「仲間以外の人々を虐げ搾取することを心の底から楽しめる」
ような非人間的嗜虐性を仲間同士で共有していなければならない。
或いは
「裏切れば殺される、殺されないためにも自らストックホルム症候群に罹患して嗜虐心旺盛な仲間に媚びる」
方向へ盲目的に流れるのでなければ我が身の安全は確保できない。
嗜虐心旺盛な仲間。
仲間という名目のご主人様。
そんな手合いは定期的に「見せしめ」を出したがる。
「見せしめ」として裏切り者に仕立て上げられて仲間に殺される。
そんな目に遭いたくなければ、上手に適応してるフリをして組織内でのし上がり、残虐で陰湿な図式を解体するしかないのである。
下手を打てば殺される。
そんな抜き差しならぬ環境で俺は生きて
そして下手を打って殺された。
生まれ落ちた場所自体がそんな環境のど真ん中だった事もあり
物心つく以前は普通にそんな環境に適応出来てた筈なのだが。
俺の魂はカルトに染まりきるには向いてなかったのだろう。
カルト耐性の芽が自分の中に芽生えていて
「おかしいものはおかしい」
と自分自身の心に訴えかけ続けていた。
猫を殺すのが好奇心だと言う人達もいるが
そうじゃない。
猫を死へ追いやるのは
「既存状態のまま閉塞してなどいられない、眺望固定病のままではいられない、進化への、光への渇望」だ。
俺を物理的に殺したのは仲間だった鬼畜達だが。
俺をそういう状況へ押し流したのは間違いなく
そうした「光への渇望」だった…。
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