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『では、まずは今回の依頼について確認しておこうか』
気を取り直すように一度咳払いを入れてから、真剣なトーンで説明を始める。
『今、目の前に見えている都市、ドズレニー。河に写る影が、ロケットが発射する瞬間に見えることから、せけんではスペースコロニーとも呼ばれている』
「宇宙に浮かぶ都市か…」
ピンギーのいる河沿いの荒れ地とは似ても似つかない、立派なビルが立ち並んでいる。まるで河の向こうから別の世界のようである。
いや、むしろ周りの様子と比べたら、この街だけ場違いのように栄えていて、異様とも取れる光景であった。
『この街は、わずかひと月程で大都市へと変貌を遂げた。ほんの少し前まで、ありふれた街のひとつだった』
「それがどうしてここまで」
『とある男が関わっているらしい』
とある男?と問うと、相棒は説明を始める。
『名前はイヴァン・ブロゾヴィッチ・ストヤノフ。街の発展の裏には彼の存在あり、と言われている男だ 』
「聞かない名だな」
『表には出てこないからね。一部では名が知られている、ってところかな』
表に出てこないということは、やっていることは限りなく黒に近いグレーなんだろう、ということは、想像するに容易である。
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