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『妹さん、今度こそ見つかるといいな』
不意に、フェレースは遠慮がちに言う。
「そういうことか」
ピンギーには5年ほど前、突然姿を消し、連絡も取れなくなった妹がいた。今の仕事をしている理由は、その妹を探すためでもあった。
『気づいていたのかい?』
「ハッキリではないがな。こんな胡散臭い依頼を請けたのだから、なにか別の理由があるんじゃないか、とは思っていた」
理由まではわからなかったが、と言うと、
流石だよ、と返す。
「それに、"犯人"も探さないとだからな」
フェレースがこの仕事をしているのもまた、弟を殺した犯人を探すためであった。
『そうだね。それにストヤノフは軍事産業で街を発展させている、という噂もある。もし事実なら、これ以上好き勝手させる訳には行かない』
とある国で起こった騒乱に巻き込まれ家族が亡くなり、唯一生き残りであった弟も殺された。犯人を憎むのと同じだけ、戦いを憎んでいた。
「わかった。出来るだけのことはやってみよう」
ありがとう、という言葉が、無戦越しに聞こえた。
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