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────4月28日。
アラームより5分遅れて目を覚ました。
「早く起きなきゃ……。理人が来ちゃう」
ふわぁ、とあくびをしながら呟く。
嫌な夢を見たような気がするが、どんな内容だったかはっきりと思い出せない。
それよりも眠気が勝っている。
起きなければならないのは分かっているが、つい再び瞼を閉じてしまいそうになる。
そのとき、アラームではなく着信音が鳴った。
寝ぼけ眼で“応答”をタップする。相手は見なくても分かる。
『おはよう、菜乃。迎えに行くからそろそろ起きて』
「……おはよう。今日もありがとう」
幼馴染みの理人だ。優しく紳士的で、私によく世話を焼いてくれる。
彼は、一言で言えば“完璧”だ。
文武両道で性格もよく、その上整った顔立ち。
女子が陰で“王子”などと囁いているのを聞いたことがあるが、まさしくその通りだと思う。
たくさんの女の子に言い寄られても、幼馴染みである私の一番近くにいてくれる彼は、やはり優しい。
私は気弱で他人にも自分にも甘い駄目人間だというのに。
制服に着替え、支度を整えて家を出ると、門の向こう側に理人が待っていた。
「ごめん、お待たせ」
慌てて駆け寄ると、彼は微笑みを返してくれる。
「大丈夫。ちゃんと起きられたみたいでよかった」
「理人のお陰だよ。危うく二度寝するところだった……」
私がそんなだから、理人も世話を焼かざるを得ないのかもしれない。
心配と迷惑をかけてしまっていることだろう。
申し訳ない気持ちと感謝が募った。
「そっちのクラスはどう? 友だち出来た?」
「うーん……なかなか難しいかも」
私は眉を下げ苦く笑う。
桜も散り、新しい環境にも慣れ始めたかという時期。
情けない話だが、人見知りの私には、まだ友だちと呼べるような間柄の子はいない。
去年は理人と同じクラスだったからよかったものの、今年は私が2年A組、理人がB組と離れてしまったのだ。
また、そもそも私は女の子たちからあまりよく思われていないようだった。
「……そっか。僕のせいだよね、ごめん」
「いやいや! 理人は何も悪くないよ」
理人自身のせいではなく、私が“王子”のそばにいるせいだ。
彼が謝ることではない。
他愛もない話をしながら歩くと、学校までの道のりはすぐだった。校門を潜る。
「ねぇ、今日も一緒にお昼食べていい?」
「もちろん。……あ、でもごめん。今日クラス委員の集まりがあるんだった」
理人が申し訳なさそうに言った。
「そっか……」
「バタバタしちゃうと思うから先に食べてて」
残念だが、それならば仕方がない。
分かった、と答えようとしたとき、不意に背後から腕を掴まれた。
「!」
驚きながらも反射的に振り返る。
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