狂ったメロディー。

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狂ったメロディー。

 哀しい海で溺れる。 何とか脱出したくて、足や手をバタバタさせるが海の深さは私をさらなる闇に連れて行く。 流れに任せたてしまえば楽なのかもしれない。 しかし流れに任せることは、死に直結することのように思える。だからずっともがき続ける。  私は今峰子の住んでいたマンションに住んでいる。マンションの所有者の男とたまに身体の関係を結ぶことで私は峰子と一緒にいれる。  現実は、峰子はもういない。  いないけれどいると信じたかった。  私はこの部屋で峰子を探しながら過ごした。  峰子の手紙の封を中々開けられなかった。 何が書かれているかを見ることで、自分が壊れてしまいそうだった。  ある日私は、酒を飲んだ。 少し飲みすぎてしまった。クラクラと頭が痺れ身体が重くなる。私はふと峰子からの手紙のことを思い出した。酔った私は手紙を封筒から取り出した。  私は恐る恐る手紙を読んでいく。 峰子の考えていた事を感じながら。 「私今天国にいるのよ。 遠くへ行こうと思ったの。」 峰子の手紙は何処か旅行にでも行くみたいな始まりだった。峰子らしい。 「あなたに会えて本当によかった。 私の気持ちを理解してくれる人なんていないと思っていたの。    皆私は恵まれているって言う。 死んでもやっぱり嫌なものは嫌、きっと。 あなたに私が死んだ理由を話すはね。 あなたは悲しんでいるかしら。 悲しんでくれたら私は少しだけ生まれた意味があったのかもね。  私が死んだ理由を話すんだったわね。 話が進まないのは私のダメなところだわ。 私は失恋したのよ。 失恋することは、わかっていた。 わかっていたけれど私は行動してしまった。  そして傷つき死んだの。  私がハルトの店に通っていたのは、好きな人に会うためだったの。 ハルトは私の幼馴染で私が恋をした相手は、ハルトの妹の真希ちゃん。 私とハルトは目立ちたく無くてもスポットライトがあたるような人間。 私はそのスポットライトが苦手で避けていた。 ハルトは私と違い長所を活かして生きていた。 ハルトは自分の欲しいと思ったものは必ず手に入れてしまう。何故かみんなハルトに協力しハルトは適材適所に相手を動かしていく。 ハルトは私のスポットライトを嫌うところを何度も注意した。 自分が恵まれていることを自覚し活かすことで他人を幸せにしろとね。 私にはできないとわかっているくせに。 ハルトと私は幼い頃からよく遊んでいてね、 お互いの家にも何度も行ったし、家族同士も中が良かった。ハルトと私は血は繋がっていないけれど、 兄弟みたいな関係だったの。 だから、私とハルトには恋愛関係は全くないの。 話がまた違う方向に進んでしまったはね。 私の悪い癖だから気にしないでね。 真希ちゃんの話をするわ。  真希ちゃんは、身体がすごく弱かった。だから学校にもあまり登校できなくて家で過ごしていたの。  私はハルトのうちに行くと、真希ちゃんとたくさんの話をしたのよ。真希ちゃんの見れない景色を私が見て話をした。 真希ちゃんは、私の話を聞いて、驚いたり笑ったり、色々な表情を見せてくれたわ。  私が真希ちゃんに恋愛感情を抱いたのは、たまたま真希ちゃんに触れた時。 真希ちゃんは、肌がもちもちしていて私はずっと触っていたいと思った。 それが恋愛感情からくるものなのか、触り心地が良いという私の感覚が反応したのかは、わからなかった。 だって、それまでの私が恋愛対象として人を見たことなんてないから。 でもね、私は日が経つに連れてわかってきたの。 私は真希ちゃんを恋愛対象として見ていることを。  私は真希ちゃんが欲しかった。 真希ちゃんがほしいと言いたかった。 でも臆病な私は言えなかった。 言ってしまえば、真希ちゃんは私から離れていくとわかっているから。 ハルトの家族は、私が中学生の時突然いなくなってしまったの。夜逃げだったみたい。 私は全ての希望も友人も片思いの相手も失った。 私は何もかもが無くなったような気持ちになり、自分で起き上がることさえ面倒になっていった。 私のことを心配した両親は、私を東京の親戚に預けた。人が多いから友人がまたできるだろうし、何より私の刺激になると考えたみたい。 真希ちゃんのいない街はどこでも一緒だから、私は 日常生活を淡々とこなしていった。 生きる意味などないと思いながら。 神様は意地悪だわ。 ハルトを見かけたの。 私はその日バイトに遅刻をして急いでいた。 だからいつもと違う道を選んで歩いていたの。 治安があまり良くないって有名な道だから普段は通ることがなかった。 だから何があるのかもわからなかった。 兎に角私はここを通り抜ければ、遅刻しなくてすむ。私はただその思いだけで歩いていたの。  そこにハルトがいた。土下座をしてね。 あとで聞いたんだけど、後輩のホストが手を出してはならない女に手を出して、そのトラブル解決をしに来ていたみたい。 私はバイトに行くことを忘れて、ハルトを追いかけた。見失わないように必至にハルトを追いかけ、私はハルトの肩を叩いた。 ハルトは振り向いたとき、私が誰だかわからないような表情をしていた。しかし冷静になったハルトは私の顔を思い出した。 私は逃げようとするハルトを引き止め、真希ちゃんが好きだと言うことを伝えた。  ハルトに伝えたところで、どうなるわけでもないのはわかっていたの。だけど、私と真希ちゃんが繋がるにはハルトしか手がかりがなかった。 やっと見つけたチャンスを私は手放したくなかったのよ。今思うとばかよね。 告白したところで実らない恋を追いかけるなんて。 ハルトは、私を試すように私に言ったの。 欲しい物があるなら、自分で取りに来い。 お前の長所を使って。 俺はお前に何度もアドバイスをしたはずだと。  私は好きでもないハルトに抱かれた。 私の長所を使ったほしいものの奪い方なんて、身体を使うしかないじゃない。 私にはどうしたらハルトみたいにできるのかわからないんだから。 私は抱かれながら涙が止まらなかった。 悔しさと、惨めさで。  私は真希ちゃんの為に頑張ったわ。 ハルトのホストクラブに通ってたくさんのお金を使う理由も全ては真希ちゃんのためだった。  私の努力にハルトは、答えた。 真希ちゃんに会わせてくれたの。  真希ちゃんは変わっていた。 身体も強くなって、今度結婚をして海外に行くと言った。  私は真希ちゃんに告白をしたの。  ずっと好きだったと。 絶対に言わないつもりだったのに、真希ちゃんが結婚すると知りあわててしまったの。 今言わなければもう真希ちゃんに会えなくなってしまうと思ったのよ。 真希ちゃんの答えは厳しいものだったわ。  真希ちゃんは、私をゴミだと言った。 気持ち悪いと。もう二度と会いたくないと。  ハルトは、変わってしまった妹を私に会わせたくないから私に意地悪をしていたと気がづいたの。 ハルトはメールで私に謝ってきたから。 もともと生きている意味なんてなかったし、私は死んで正解なの。 だからバイバイ。 心のそこからあなたを親友だと思っていた。  だってあなたは、私そのものだったから。 」  峰子、私も峰子のこと大好きだったよ。  私そのものだもの。  私の心は崩壊した。 どんな感情が心にあるのかもないのかもわからないが、再び走り出すエネルギーが身体から湧いてきた。  私はハルトを自分のものにする。  
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