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6.踏み出す一歩
「ごちそうさまでした」と手を合わせると、「お粗末さまでした」と向かいから小さな声が返ってくる。
そんな些細なやりとりが嬉しくて、陽樹は思わず口元に浮かんだ笑みを隠すこともしなかった。
ずっと前から気になって、気に入って、なんとか近づこうとしていた彼女に、ようやく好きだと伝えてわずか数日。
嫌われてはいないと思うし、ここ最近のやりとりを振り返れば、決して自惚れではなく彼女も好意を持ってくれていると感じるけれど。
ゆっくり進めていこうと持久戦を覚悟していたから、いきなり彼女の家に招かれたときには、柄にもなく動揺してしまった。
部下に不審に思われたことよりも、その様子を当の美南にすべて見られていたことのほうが恥ずかしい。
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