6.踏み出す一歩

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とはいえ深い意味があった誘いではないのだろう、と覚悟はしておいた。 彼女のことは一年近くずっと見ていたけれど、彼氏がいるような素振りも、社内の男に思いを寄せている様子もーーー逆は若干あったけれどーーーなかったし、積極的に彼氏を求めているようにも見えなかった。 そもそももしそんな様子が垣間見られたら、こんな悠長に構えてはいなかった。 人が不満をいうような仕事も率先して取り組んでいる姿や、誰もがやりたがらない片付けを、文句も言わずに手際よく熟していく彼女に惹かれたのは、自分にとってはある意味必然だったように思う。仕事人間で、1日のほとんどを社内で過ごしていた自分にとって、会社で共に過ごす人間は良いところも悪いところも目についてしまうから。
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