6.踏み出す一歩

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淹れてくれたほうじ茶を飲みながら、今日あったことを話していると、あっという間に22時を過ぎていた。 そろそろ帰った方がいいんだろうな、と思いながらもなかなか立ち去り難い。 美南の家は、1DKで、ダイニングテーブルの置かれたスペースの奥に、ベッドとソファ、テレビなどが置いてあるのが見える。普段はあちらで過ごす時間が多いのだろうか、と考えていると、その視線を辿ってか、ぽつりと美南が呟いた。 「そういえば、テレビも付けないのってめずらしいです」 「ん?」 「普段一人だとまずテレビつけちゃうから。なんか新鮮で」 「俺も家だと結構つけちゃうかも。見てるわけじゃないんだけどね」 「三浦さんでも?」 「どういう意味?」 「いえ、おうちでも仕事とかしてるのかなって」 「さすがにそんなことないよ。メール返すくらいかな」 「へえ…」 「今度はうちにおいでよ」 話の流れでさらりと誘ったつもりだったけれど。 向かいの美南がびくりと身体を震わせたので、途端に後悔が襲ってくる。
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