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「そろそろ帰ろうかな」
「え?」
踏み込み過ぎたかと思えば、今度は途端に残念そうな声を上げる。
「寝るの遅くなっちゃうでしょ」
こんなに臆病になるのは久し振りだな、とその表情を伺いながら立ち上がった。
荷物を持ち、玄関で靴を履くと、ぱたぱたと追いかけてきてくれる彼女。
「じゃあまた明日会社で」
みつめるだけ名残惜しくなってしまうから、さらりと言ったつもりだった。
「あの!」
おやすみ、と続けようとした言葉は美南の力強い呼び掛けで止められた。
「あの、私も好き、ですから。三浦さんのこと……」
だんだんと小さくなっていく声。
それでも十分だった。
手にした鞄を投げ置いて、ぎゅっと抱きしめる。
「み、三浦さん?」
「嬉しい」
より力を込めれば、胸に寄り添ってくれる彼女。
「すげー好き」
ぽろりと零れた本音に、「私もです」と囁かれて。
ますます抱きしめる腕に力を込めた。
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