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そんな風に時間を過ごしていれば、陽樹から「今から会社を出る」と連絡が来て。
慌てて台所を片付けていると、気を落ち着ける間も無く迎えがきてしまったのだった。
夕飯にはさすがに早いということで、いったん陽樹の家に向かうことにした。
会社から二駅のところになるらしい。美南の家からちょうど反対側だ。
車はスムーズに住宅街を進んでいく。美南は助手席からきょろきょろと辺りを見回していた。
「どうした?」
「駅どっちかなって」
「後でこの辺歩こっか。俺も美南に覚えてほしいし」
そう言って陽樹が笑顔を向けるので、美南は余計落ち着かなくなって視線を彷徨わせてしまった。
陽樹はそんな様子に、より笑みを深める。
「近くに美味しいケーキ屋さんとパン屋さんがあるよ。きっと気に入ると思う」
「なんか高級そうですね」
「どうかなあ。あ、明日食べるパン買ったらいいかもな」
さらりと朝食の話をされて、美南の緊張がまた戻ってきた。
ぎくりとあからさまに固まった美南に、可愛いなあと頬を緩めながら陽樹は信号が変わるのを待ったのだった。
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