9.二人の時間

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「全然物がないです……」 リビングに戻ってきた美南はなぜかしょんぼりしている。 「うーん、家じゃ寝るだけって感じなんだよ」 「よく身体壊さないですね……」 「逆に寝る時間だけは取ってるから」 そう言って、くいっと美南の手を引っ張る。 「寝室は行った?」 「え、いえ……」 「こっち」 緩く首を横に振った美南を連れて、リビングの奥にある扉を開いて電気を点けた。 多分緊張しているんだろう。頬を赤らめておずおずとついて来る様子が可愛くて仕方ない。 八畳ほどの室内には、ベッドとサイドテーブルしか置いていない。 煌々と明かりが点っているからだろうか、少しほっとした様子の美南の前で、クローゼットを開ける。 「ここ、美南が使って」 「え?」 「服とかなんでも置いていってよ」 「え?……え?」 「どうした?」 ぱくぱくと口を開けたまま呆然とクローゼットの中を見つめる美南に、ふと不安になる。
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