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10.一緒にいるだけで
「……ごめん」
ベッドの中、小さな声で陽樹が謝る。
美南はぎゅっとシーツを握りしめて、眉を吊り上げてみせた。
と言っても本当に怒っているわけではないから、なかなか上手くいかない。
それでも美南の様子を伺う陽樹は、その「お芝居」に気づいていないようだ。
「もう21時ですよ?」
「うん」
「寝ちゃうなんて」
「ごめん」
けれどしゅんと子犬のように大人しくなってしまった陽樹をみているのは限界だった。
ぷっと小さく吹き出すと、もうそれ以上は続けられなかった。
「美南?」
「ごめんなさい、落ち込んでるから思わず……」
「え、怒ってないの?」
「怒らないですよ。だって私も寝てたし」
そう言って裸の胸に頬を寄せる。
結局夕方からベッドに引き摺り込まれ、有無を言わさず身体を重ねてしまったのだけれど、そのまま二人で微睡んでいたら、お互い完全に眠ってしまったのだった。
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