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2.頼れる仲間
私は会社を休んで〈茶座荘〉と書かれた家のインターホンを鳴らした。あの名刺にある住所で、家から1時間程の場所にあった。
電話をして、ざっくりと話を聞いてもらった結果、会って詳しく話を聞きたいということになった。その時言われたのは、『できれば平日、会社を休んでいつも通り出勤するフリして来れませんか』だった。私は言われた通り平日に仕事用の服装、靴と鞄のままここへ来た。
茶座荘は3階建ての家で、年季は入っているけど温かみを感じる建物だった。しばらくするとドアが開いて馴染みのある顔が目の前に現れた。
「久しぶり。こんな遠くまでごめんな」
私を迎え入れてくれたのは安嶋橙吾、高校の同級生だ。185cmの長身に黒髪短髪の爽やかな笑顔は昔と変わらない。昔から私が困っているとすぐに駆けつけてくれていたので、今でも彼の顔を見ると、なぜだかすごく安心する。
「ううん、こちらこそ、面倒な相談してごめん。他に頼れる人いなくて。同窓会で名刺もらってて助かった」
中に入ってすぐの広間には大きなテーブルが1つあって、その周りはダンボールだらけだった。
「あ、愛那、いらっしゃい……っと、わわ。あいたっ」
ダンボールを3つ抱えていた男の人が足元の段差に躓いて派手に転んだ。こちらも高校の同級生で佐倉浩介。172cmと身長はそれほど低くないのに、金髪で華奢に見えるシルエットといつも隣りにいる長身の橙吾のせいで小柄に見える。いつも元気で周りを明るくしてくれる人だ。
「一気に運ぶからだよ……ごめんな、愛那。バタバタしちゃって。あ、とりあえずそこ座って」
浩介がぶちまけた荷物を拾いながら言った橙吾の言葉に従って、大きなダイニングテーブルに備え付けられた椅子に座る。
「愛那、久しぶりだね。元気してた?」
浩介が痛々しく膝を抑えながら私の向かいに座る。隣に橙吾が座ると、奥の台所から体格のいい男の人がお茶を持ってきてくれた。
「浩介は相変わらずみたいね。落ち着きがないというか何というか……」
「ひっどいな。俺だっていい年なんだから高校の頃と比べたら落ち着いたよな?」
浩介が橙吾の方を向くと橙吾は苦笑いしていた。
「いやー、あの頃からあんま変わってないかもな。危なっかしいんだよ、お前」
そんな2人のやり取りは高校の頃から変わっていない。自然と笑い声を上げた自分に驚いて、涙が出てきた。そんな私を見て2人は唖然としている。
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