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「ご、ごめん。最近仕事が忙しい上に家に帰っても不安しかなくて、自然に笑えるだけで嬉しかったんだ」
泣き笑い状態の私を見て2人は姿勢を正した。
「早速だけど、電話を貰った件。怪しい人影とかは見てないんだよね?」
「う、うん。家の前とか見てもそういう人影とかは見たことなくて。でもスーパーで買ったものまで把握されてるし、メールが来るのは決まって家の電気を点けたタイミングだから。どこで見られてるか分からなくて」
「もしかしたら遠隔で監視されているかもしれないね。あと、どこかにGPSが付けられているのかも。鞄とスマートフォン調べさせて頂いてもいいですか?」
そう言って隣に座った人はお茶を持ってきてくれた人で話を聞いていたみたいだけど知らない人だった。そんな人からの突然の話に戸惑ってしまい、橙吾の方に目をやるとすぐに察してくれた。
「ごめん、紹介がまだだったね。彼は窪田保人。機械系に詳しいんだ」
「ご挨拶が遅れました、窪田です。怪しいものではないのでご安心ください」
体格は大きいけれど笑顔になると細い目がさらに細くなって、不思議な安心感を醸し出している。私は慌てて立ち上がった。
「あ、原田愛那です。よろしくお願いします」
鞄とスマートフォンを窪田さんに渡すと改めて橙吾と浩介に向き直る。メールが来るようになった時期や内容について改めて説明していると、窪田さんがやって来た。
「GPSについては見つかったよ。スマートフォンに怪しいアプリが入ってる。今日ここにいることもバレてるだろうね」
いつの間にインストールされていたんだろう。普段常に手にしているものなだけにぞっとする。
「今日帰ってきたときどんなメールが来るかを確かめて、俺たちの想定通りのものだったらその家出てここに来なよ。その時に怪しいアプリは削除して、それでまた様子見よう」
それが浩介の判断だった。ここに来る? 最初はどういうことかと思ったけど、ここはシェアハウスになっていて、まだ部屋に空きがあるとのことなのでいざとなったら避難させてもらうことにした。
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