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3.反撃開始
この日は仕事をしている時と同じ時間まで居させてもらってからいつも通りスーパーで買い物をして帰った。
家に着いて電気を点けるとメールが届いた。
『愛那ちゃん、今日はいつもと違うところにいたみたいだけど、なにか特別なお仕事してたのかな? 夜ご飯は珍しくお弁当なんだね。僕も好きだよ、焼鯖弁当』
いつもの通りのメールだけど、昨日までとは違って恐怖感はだいぶ少ない。メールを浩介に転送すると、概ね予想通りだと返ってきた。窪田さん曰く今週が勝負らしい。
それから7日後、窪田さんのOKが出たので、最低限の荷物を持って浩介達の元を訪れた。GPSのアプリは消して、他に怪しい物がないかは確認してもらった。会社にも事情を話して、しばらくはリモートワークにさせてもらう。在宅でもできる作業には限りがあるので多少の迷惑はかけてしまうけど、その分作業量を増やすことで納得してもらった。
夜になり、自分の部屋でいつメールが来るかドキドキしながら待っていた。23時を過ぎた頃、基本的にこの時間を超えて帰宅することはないという時間にメールが来た。
『こんばんは、愛那。どうやら悪質なお友達にそそのかされて僕達の繋がりが途切れてしまったようだね。家にも帰らず、在宅で仕事を続けるつもりなのかな。でも必ず愛那を助け出してあげるから、もう少し待っててね』
文面を見た瞬間背筋が凍りついた。繋がりというのはGPSのことで、家に帰っていないことがバレているのは想定内だった。だけど在宅で仕事をしていることが何で分かったんだろう。
リビングに向かうと浩介と橙吾が待っていたのでメールの文面を見せる。
「仕事については……ハッタリかもしれないけどもしかしたら職場の人と何かしらの繋がりがあるのかもしれないね」
橙吾が立ち上がって奥で何やらパソコンに向かって作業をしている窪田さんの元へ向かう。しばらく話をした後、笑顔で戻ってきた。
「愛那、想定どおりだって。むしろ良い情報手に入れられたみたいだよ。だから安心して」
橙吾の言葉に安堵する。ここに来たのはいざという時身を守る為だったけど、精神的な面でこれ以上の環境はないなと実感する。
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