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それから5日経って、避難生活にも慣れてきた。不安が減ったからか以前より眠れるし笑えるようになった。
最近メールが来るのは23時と決まっていた。『遠く離れて寂しい』や『会えない分お互い想い合う時間が増えるよね』といった、鳥肌ものの文面が送られてくる。
だけど今日はいつもと違っていた。窪田さんは外出していたので、3人で夜ご飯を食べ終え、談笑していた21時頃にメールが来た。しかも今回は添付写真がついている。
中を開いたとたん、驚きのあまり手の中からスマートフォンが滑り落ちた。
「愛那どうした? 大丈夫?」
隣りにいた浩介が私のスマートフォンを拾い上げて画面に目をやると「ごめん、ちょっと借りるね」と言って橙吾の元へ駆け寄った。橙吾も驚いて言葉を無くしている。
今日来たメールの文面はこうだった。
『愛那、今日は久しぶりに君の姿を見られて嬉しかったよ。お昼ごはんはパスタだったんだね。美味しかったかい? でも、男と一緒にいるのは良くないな。愛那に危険が及ぶ前に僕が助け出してあげるよ』
添付されていたのは浩介と橙吾と3人で昼ごはんを食べている写真だ。今日、ここのリビングのもので、外から撮られたらしい。浩介と橙吾の顔にバツマークがついている。
橙吾や浩介にまで迷惑がかかってしまう……恐怖のあまりその場にうずくまると、橙吾がすぐに駆けつけて優しく体を抱きしめてくれた。
「愛那、大丈夫だから、落ち着いて。呼吸をゆっくりするんだ。吐く方に意識しながらね」
気づけば猛ダッシュした後みたいに呼吸が荒くなっていた。言われるがままにゆっくり深呼吸する。
「原田さん、大丈夫だから。これ」
私が呼吸を整えている間に帰宅した窪田さんがそう言って1枚の写真を見せてくれた。そこには木の茂みに隠れてカメラを構えている男の人が写っていた。
「これが原田さんを追いかけていた男です。見覚えありますよね?」
窪田さんの問いに私は小さく肯いた。窪田さんはそれを確認して私に1枚の紙を差し出した。
「では、本日はこの文面を返信してください」
私は震える手で文章を打っていく。
『私のいるところまで来るとは思っていませんでした。
一緒にいる人は友人です。彼らに何かされる前に一度会って話をさせてください。
明日の午前11時、最寄り駅の改札前で待ち合わせしましょう』
何度も文章を確認して送信ボタンを押すと、『やっとこの日が来たね。明日楽しみにしてるよ』とだけ返信があった。
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