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4.最終決戦
翌日、私は最寄り駅の改札前に立っていた。これからすることを考えると緊張が止まらない。だけどひとりじゃないと思えば怖さはそれ程ではない。
「お久しぶりです、原田さん。……いや、愛那。また会えて嬉しいよ」
どこからやってきたのか、いつの間にか隣に彼は立っていた。思わず悲鳴を上げそうになったのを必死に堪えた。
「お……お久しぶりです、小野田……さんですよね」
彼は笑顔を浮かべながら、私の右手を両手で包み込むように手に取った。
「やだなあ、泰史って呼んでよ。本当はそうしたかったんでしょ」
声も手も恐怖しか感じない。必死に手を引こうとするけど強く握り締められて引き抜くことができない。
「は、離して下さい。メールも迷惑なんです、監視するようなこともやめてください。以前言いましたよね」
「ああ、あれは単なる照れ隠しでしょ。僕としてはもっと返信が欲しかったなぁ。毎日のように会いに行ってたんだから見つけて欲しかったし」
恐怖で涙が出そうだった。けれどまだ泣く訳にはいかない。やるべきことをやらなければ。
「やっぱりお店で私のこと監視してたんですね。買ったものチェックしたり。家に帰ったタイミングはどうやって確認してたんですか?」
小野田さんは笑顔を浮かべ、私の手をぎゅっと握ったままこちらを見つめている。
「最寄り駅の先は基本GPSだけど、スーパーはすぐ近くにいたんだよ。全然気付かなかった? スーパーから家に帰って、すぐに愛那の家の窓を見て、電気の点くタイミングでメッセージを送っていたんだ。僕の家に来てみるかい? 最新の望遠鏡、3台も揃えたんだよ」
もう我慢の限界だった。奥にいる橙吾に目線を送ると、すぐに駆けつけてくれた。
「いい加減にしてください。彼女嫌がってるじゃないですか」
橙吾はすぐに小野田さんの手から私の手を引き離してくれた。小野田さんと私の間に入ると、後から駆けつけてくれた浩介が恐怖で震える私の肩を優しく支えてくれてようやく私は小野田さんの方に再度目を向けることができた。
「誰かと思えば愛那を監禁していた2人じゃないですか。よくこんなところに顔を出せましたね。今から警察行きますか?」
(監禁? 私は自分から行ったのに。どちらかというと避難させてもらっただけなのに。なんでそんなこと……)
言い返したいけどもう恐怖で声が出なかった。言ったところでまともに受け取ってもらえるとは思えない。会話をすることすら怖くなっていた。
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