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2時間後、僕はギター1本を抱えて病院に足を踏み入れた。浩介さんと橙吾さんの後ろをついていく。
交流会は入院している子供たちで仲良くなってもらうために設けられた場なのだとか。ちょっとしたおやつを食べながらゲームをするらしい。
最後に歌を歌う時間があって、いつもは歌付きの音源を流しているんだけど、子供たちの声が聞こえにくいので今日はギターの伴奏でやってみようとなったらしい。渡された楽譜は簡単なもので練習しなくてもすぐに弾けるものではあるんだけど……
僕は場の雰囲気に馴染むためゲームの時間は裏方として見守っていた。浩介さんの進行はテレビで見る司会者のようにテンション高く、子供たちを飽きさせないものだった。感心して見てしまう。
交流会は楽しく進み、いよいよ最後歌を歌う時間になった。僕はギターを持って子供たちの横に座る。これは橙吾さんから言われたことだけど、とにかく笑顔でいることを心がけた。
最初こそ見慣れないギターに子供たちは興味津々だったけど、徐々に歌うことが楽しくなったのか、歌の時間は大いに盛り上がって終わった。
1つ気になったのは、僕がギターを弾き始めて少し経った頃、遠くの方でずっとこちらを見ている女の子がいることだった。高校生くらいだろうか。目が合うとすぐにそらされてしまった。
交流会が終わると子どもたちが群がってきた。『もっと弾いてー』『僕も弾きたい』など。どう返していいか分からず橙吾さんを見ると、橙吾さんは笑顔で「お部屋に戻るよー」と言ってあっという間に子供たちを引き連れていなくなってしまった。
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