5.彼女の残してくれたもの

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5.彼女の残してくれたもの

「今週のゲストは、橋元翔太さんです。2週間前の放送で、橋元さんの曲を流したところ反響がものすごいんですよ。動画も大人気とのことで、本日は直接話を聞こうとお越し頂きました」    僕の歌を聞いた浩介さんと橙吾さんは、一人でも多くの人に届けたいと言い、動画撮影を提案してくれた。そして保人さんが動画の撮影から編集、アップロードまで全てをやってくれた。  それだけでなく、その曲を知り合いを通じて地元のコミュニティFMで流してくれた。それをきっかけに動画は一気に注目されることとなった。 「橋元さんの曲に勇気をもらったという人が続出しています。耳馴染みのいいメロディや橋元さんの優しい歌声は勿論ですが、一番は歌詞ですよね。作詞は橋元さんともう1人、Sayu Nakaharaとありますが、この方はどのような方なんですか?」 「彼女とは病院で出会いました。最初は未来に希望が持てない、そう言っていたんですけど、音楽をきっかけに希望を見出して、自分で曲を作りたいと言っていました。……残念ながら不慮の事故で亡くなってしまったんですが、最後に素敵な歌詞を遺してくれたので曲にしてみました。彼女の想いが1人でも多くの人に届けばと」 「そうですか、もうその方はいないんですね。でも、良い出会いがこの素晴らしい曲を作り上げたんですね。では、聞いていただきましょう……『明日への力』」  ちなみに、この女性が中原さんの娘だということを中原さん本人が自慢げに話して僕は怒りが収まらなかったが、彼女がなぜ病院にいたのかを週刊誌に暴かれたことで娘を虐げてきたことが明らかとなり、選挙で苦戦することとなったのは言うまでもない。  あれから僕は1人で歌っていくことを決めた。1人でどこまでやれるかは分からないけど、音楽の力、素晴らしさを体感した今、誰かの力になるとまでいかなくても、楽しい気分になったり勇気づけられたり、そのお手伝いができるかもしれないと思ったから。それが沙優さんが自分で作り出した道であり、今となっては僕にとっての大きな道筋になっている。
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