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BOOTH開店記念☆ if話 透が子どもになっちゃった 2
「雷くん、どうしよ。寝る前にあんな話してたからかな……」
昨晩眠る前にベッドの上で眠る前のひと時にした話。もしも二人が出会ったとき、透が子どもで雷が高校生だったら二人は今みたいな関係にはならなかっただろうかとか、そんな他愛ないお喋りだ。
透は夢見がちなところがあるので、たまにこういう突拍子もない話をして楽しむ癖がある。子供の頃、母親に放っておかれ、祖母も小料理屋を切り盛りしていたから透は店の二階の小さな部屋で一人、絵をかいたり本を読んだりして静かに過ごすことが多かった。
だから寂しさを紛らわすために楽しい空想をしてぼんやりする時間も多かったように感じる。そしてまさに今店が立っている場所がその祖母の小料理屋があった場所だ。
「もしもさ、雷君が朔の兄さんで、高校生だったとして、僕が朔と同じ小学生で家に遊びに来ていたとしたら、きっと僕はベータのままで、雷君はアルファで家を継いだだろう? 僕らはきっと番にはなれなかったんだろうなあ」
「どうしてそんな寂しい想像をわざわざするの?」
雷はベッドの中で困ったような顔で透を見つめてきた。透は伏し目がちになると雷の胸にすり寄った。
「……今が幸せすぎて、これが夢だったらどうしようって思うせいかな。たまに怖い夢を見て飛び起きるんだ。……今のはそういう夢の話。夢の中の僕は小学生で、高校生の雷君に見向きもされない」
「見向きもされないってことは、その小さな透さんは俺に恋をしてくれているの?」
「そうだよ。朔のお兄さんはカッコいいねえって。多分憧れてる」
「それは光栄だな」
「だけど僕はベータだから、雷さんの恋人にはなれないって、淡い初恋は胸の中で小さく弾けてそれで終わり」
「……それはどうかな」
頭の天頂に柔らかなものが当たる感触があった。リップ音が何度かなり、雷が愛おしそうに透に口づけてくれる。
「弟が連れてきた子があんまり可愛くて、俺はきっと弟に嫉妬してしまうかもしれない」
「そうかな……。僕、別に普通の子だったよ。大人しくて、個性なくて」
「きっと小さな透さんも可愛い」
「雷君こそ可愛かったよ。目がくりくりって大きくて、仔犬みたいだった」
今も黒く濡れた美しい瞳はそのまま、すっかり賢い大型犬といった感じだが。
「だけど小さなその子に手を出すことはいけないことだから……」
「どうするの?」
雷はふっと吐息だけで笑ってから身体を起こし、透の腕を再び寝台に縫い留めた。
「弟から奪って、その子が大きくなるまでずっと、屋敷の奥に閉じ込めちゃうかもな」
妖しい光を宿す雷の瞳が近づいてきて、唇を奪われた。透は身体の力をすっと抜いて、彼にされるがままに乱れた。
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