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BOOTH開店記念☆ if話 透が子どもになっちゃった 3
「あんな話したからなのかな? どうしちゃったんだろ。僕の身体」
振り向きざま、焦って雷に飛びつく透に、雷は至極冷静な様子で片手では透を引き寄せ、もう片手はやんわりと顎のあたりに当てている。
「もしかしたら……。原因は……」
「あれ?」
「透さん、昨日口にした、ハーブティ」
「あの、ママたちの贈り物?」
雷は苦いものを噛んだような顔で眉間をぐりぐりと押した。
「はい。例のハーブティです」
雷のところには時折、母とその番となった女性、いわゆる「ママたち」から海を越えて贈り物が届く。そして彼女たちの最愛である雷の小さな妹と透はビデオ通話を通じてすっかり仲良しになっていた。
『母たちは俺と話すより透さんと話す方がずっと楽しそうですよ』と雷が言ってくれるのが嬉しくて、透はこまめにグリーティングカードや細やかなプレゼントを送るし、あちらからも色々届く。
今回向こうが送ってくれた荷物の中に、お菓子やハーブティが数種類入っていた。透は雅の薫陶を受けているので、紅茶やハーブティを好むからだ。しかしその中に雷の師ともいうべき植物学者が雷に渡してほしいと送った『若返り成分』の入ったハーブが紛れていた。それは小さな妹が自分が書いた手紙や絵を入れるため、荷物を混ぜてしまったからであり、雷は痛恨の見逃しをして透に渡してしまっていた。
それをうっかり透が飲んでしまってから、ママたちからの贈り物のついてのメールで気が付いたというわけだ。
「若返るっていっても、身体が縮むなんてこと、本当にあるのかな」
とはいえ目の前に翳した自分の手は一回りも二回りも小さくなっているし、鏡に映るその姿は小学校高学年か、それとも中学一年生ぐらいか。どちらにせよ十代前半である姿に間違いなかった。
「俺がちゃんと母さんからのメールに目を通していればこんなことにはならなかったのに。きちんとドクター連絡して、どんな成分がはいっているものだったのか、どうしたら元に戻れるか聞いてみるから、それまで透さんは仕事を休んでもらってもいいですか? ああ……」
雷が頭のずっと上の方でうんうん唸っているのが心配で、透は手を伸ばして一生懸命彼の頭を撫ぜようとしたがとても届かなかった。
「だけど今日は必ずケーキをお客さんに引き渡さないと。いつもお孫さんとおばあ様で買いに来てくださる方で……。そのおばあさまの喜寿のお祝いだって、とても大切なお品なんだ」
「もちろん、俺が代わりに店頭に立ちますよ」
一生懸命背伸びをしている透が鏡越しに分かったのか、雷はふと表情を緩めると透の足元に屈んでむしろ華奢な透を見上げるような体勢になった。
「でも……。僕も下に行ってもいいでしょ? 雷君を信用してないわけじゃないよ」
「分かってますよ。透さんはお客様を本当に大切にしてらっしゃるから、お客様の節目に立ち会いたいんですね」
頬を染めてこっくりと頷く透は、そのまま長い腕に幼く華奢な身体をそっと引き寄せられた。透は普段よりずっと大きく感じる彼の頭を抱え返して、瑞々しい頬で彼に頬ずりした。
「それから……。こんな姿になっちゃったけど……。今日、僕と約束通りデートしてくれる?」
潤んだ瞳で見つめれば、雷は小鳥にでもついばまれたようにくすぐったそうに眼を細める。
「こんなに愛らしい透さんと出かけないなんて選択肢。俺にはありませんよ」
そして立ち上がりつつ、高々と透を抱え上げた。
「今日は美術館ではなくて、隣の動物園に行ってみますか? 童心に帰って」
「それもいいかも」
子供の頃ですら、こんな風に力強く誰かに抱き上げてもらったことはない。
逞しく頼りがいのある雷に、透は戸惑いながらもとくんとくんと心臓が高鳴るのを感じた。
「でも、約束です。表に出たら、俺の傍を片時も離れないでくださいね」
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