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その日、久々に仕事が休みだったので、私は部屋のソファで編み物をしていた。欠伸を一つした直後、激しい爆発音が聞こえた。一瞬、空爆の時のことが過って眩暈がした。
「今の何?」
寝室にいたクローバーがやってきて声をかけた。外に出てみると、向こうの山から煙が上がっているのが見えた。
「軍のヘリが墜落したんじゃないか」
誰かの話し声が耳に入り、激しい胸騒ぎがした。
その夜、ヘリから女性の遺体が発見されたとニュースが告げた。身元は不明で年は二〇歳前後、髪はブラウンで長く、クルムト軍の兵士と見られるという。
深夜、クラブハウスで妹の歌を聴いた後、フロアで男性たちと戯れる彼女を置いて海辺を散歩した。
遺体の全ての特徴が、エルネスと合致していた。歌を聴いている間も、そのことばかりが頭に浮かんで吐き気がしたほどだった。どうか、彼女ではないようにーー。何度神に祈っても、不安は消えなかった。
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