アリスと青い薔薇

11/14
前へ
/14ページ
次へ
 翌日、雑貨屋で棚に商品を並べているときに、ドアが開くカランコロンという音が鳴った。入り口に目を向けた瞬間、私は目を疑った。  そこには兵士らしき一人の女性が立っていた。迷彩服と顔は土に塗れ、額からは血が滲んでいたが、すぐに彼女と分かった。彼女も私を見つめ立ちつくしていた。 「エル!」  駆け寄って彼女を抱きしめた瞬間、これまでの思いが涙となって溢れ出た。エルネスはまるで今のこの状況を飲み込めていないかのように、棒立ちのままだった。彼女は腕を解いた私の顔をじっと見つめ、囁きにも似た声で私の名を呼んだ。数秒後、その目から一筋涙が流れた。 「生きてたんだね」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加