アリスと青い薔薇

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 激しい地響きに身が竦む。ここが半年前までのどかで平和な町であったことなど嘘のように、すぐ頭上では爆撃音が響いている。数秒後、轟音とともに屋敷の崩れる音が聴こえ、咄嗟に頭を下げ両手で抑えた。予め大切なものはこのシェルターに運んでいたものの、曽祖父の時代から受け継がれてきたあの家は無惨に破壊されてしまった。到底受け止め切れるものではなかった。コレクションの並べられた父の部屋も、両親の寝室も、好みの空間に飾り付けした自分の部屋も、全てが瓦礫と化しているという現実がーー。  目の前にあるのは灰色のコンクリートの壁と、啜り泣く使用人たちの姿だった。 「両親は……クローバーは、無事かしら」  両親と妹のことが頭から離れない。両親がベクトール伯父さんの家の地下室に逃げていること、妹のクローバーが生き延びていることを祈るうち不安と恐怖に襲われ、握った掌に爪が食い込んだ。 「きっと大丈夫です、みんな無事ですよ」  囁くような執事の声を聞きながら、ぎゅっと目を瞑った。
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