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「……?」
どうしたのだろう、この少女は。いきなりかっこよく指を鳴らして。
「…っ」
頭がくらくらする。何か、大切なことを思い出したような…。
次の瞬間、僕はそれさえも思い出せなくなった。
「……」
「……」
重ーい沈黙が、場を完全に支配した。
それでも僕は、沈黙を守り続ける。
面倒くさいから。
「……」
「あー…」
少女は何か言いたげに口を開くが、またすぐに閉じた。
少女は、無理やり明るい声を出していった。
「出て来ーい!私の誇り、美少女三人組!」
「「「おう!」」」
謎の三人の女の声が聞こえてきた。
途端に、○○戦隊○○ジャーが出てきそうな音楽も流れてくる。
ある程度続きが予想できて、僕は呆れたようにため息をつく。
「……見ているこっちが恥ずかしい…」
「赤‼︎」
そう言った少女が、高速で扉から入ってくる。
活発そうな子だ。
その少女は、お決まりのキメポーズをして叫んだ。
「私はチェリー!」
確かにチェリーらしくチビで、髪も赤い。らしいと言うべきか、声も子供っぽい。
「私はオレンジ!」
同様に出てきて、僕から見て右に出た少女も叫ぶ。オレンジっぽく、何というか、胸がふくよかだ。髪はオレンジ。声はどこか天然っぽい。
「私はグレープ!」
クールな声だ。その声だけで場を支配しそうなほどに。体が細く、当然のように髪は紫だ。こっちから見て左側の前髪だけ長く、目がそれで隠れている。こいつだけ、まともそうだな。こんな意味不明な団体に入ってるのが不思議なくらいだ。
『五人合わせて、フルーツ戦隊フルージャー‼︎』
……。
なんだ、この訳の分からんコスプレ3人組は。あと名前ダサい。
というか、見た目でフルーツの名前付けるとか、ネーミングセンスナッシングかよ!
というか、五人?
ここには三人しかいないような…。
扉から二人の顔がひょっこりと現れる。
「あ、メロンだぜ☆」
「ニンジンですー」
五人が一瞬で扉の前に移動して、ポーズをとった。
『五人合わせて、フルージャー‼︎』
一人だけ野菜いるじゃねーか‼︎
名づけ親はネーミングセンスだけじゃなくて頭も終わってんのか⁉︎
あとどこの戦隊だよ!聞いたこともねえわ!
その中のチェリーが駆け寄ってきて言う。
「そこで蹲ってるそこの君、どうしたの?」
「どうもしねえよ。お前らが勝手に愉快に出てきといてなんなんだよ」
「あれ、おっかしいなあ。私の予想だと、『うわーん!こけて痛いよー!』って言ってくれるはずだったんだけど…。ヒーローって難しいなぁー」
「お前の予想なんぞ知るか!ていうか俺はガキじゃねえ!」
そんなちゃちい人助けするヒーローなんていねーだろ!
難しいって、お前コスプレしてるだけだろ!
「え、子供じゃないの?じゃあ赤ちゃん?」
そう言ってチェリーは首を傾げる。
赤ちゃんって、煽ってんのか⁉︎
「どこをどう見てそう言えるんだ⁉︎俺よりはよっぽどお前の方が子供だわ‼︎」
「えー…。知らなかった……」
マジで言ってたのかよ!
「お前は今まで鏡を見たことがないのか⁉︎」
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