二人の転校生

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「成宮、(はい)りぃ」  先生の声で我に返る。成宮と呼ばれたソイツは小さく腕を振りながら、前傾姿勢で教室に入ってきた。足取りは至極軽やか。脳内で出囃子が鳴り響く。その振る舞いはまるで── 「初めまして、成宮(なりみや) 大貴(だいき)です」  成宮は俯くことなく、先生を窺うでもなく、俺たちを真っ直ぐ見た。まるで観客と対峙するような視線で。どこから来たか、夏休みは何をしていたか。朗らかな声で流暢に自己紹介を続ける。転校生の不安や緊張なんて微塵も感じさせなかった。 「わからないことばかりなので、いきものがかりの方は僕のお世話をお願いします」 「ウサギか!」  先生の脊髄反射のツッコミに、クラスメイトからドッと笑い声があがる。成宮も白い歯を見せて笑った。この教室で、唯一俺だけが体の芯から凍えるような寒さを覚え、震えていた。
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