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愚か者
「中島さん。郵便届いてますよ」
「僕に? ありがとう」
総務の女性からA4サイズの封筒を受け取った中島智則は、女性が立ち去ったのを確認すると、すぐに封筒の裏を確認した。差出人の名前を見ると慌ててトイレの個室に駆け込んだ。
職場に個人あての郵便が届くはずがなかった。だからまさかと思ったが、これが現実であることに血の気が引いた。ここ数日、中島は脅迫をうけていた。相手に覚えはないが、その内容は事実だった。そしてとうとう会社にまでその魔の手が伸びて来てしまった。もう無視もしていられないなと思いながら中島は封を切った。
中には今まで送られてきた画像を引き延ばした写真が入っていた。そこにはLINE上で交わされた中島とパパ活相手との赤裸々な会話が写っていた。さらに手紙と写真一枚がおさめられた白い封筒が入っていた。
写真は中島と女の子がラブホに入ったところだった。しかもそれが店内からの撮影では言い訳のしようがなかった。
『これで分かっていただけましたか。ご家庭と会社に知られたくなければ200万をご用意ください。それだけで全て無かった事にするとお約束しましょう。交渉決裂の場合は、今後の人生ご自身で責任をおとりください。』
文末には金の受け渡し場所と日時が書いてあった。
「なにが交渉だ脅迫だろクソ!」
中島は歯を食いしばって悪態をつくと、諦めたように水を流した。
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