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眩暈
優は正面を見つめたまま話をはじめた。
「実は元カレがDVだったの。今はもう完全に関係ない。私のカードを勝手に使ってて。それはカード会社から連絡が来て口座を止めたんだけど。審査が通らないから私の名義で作ったカードがあって。その支払いが200万あって。相談してた弁護士から連絡があって、私が使ってないって証拠もないし、逆に名義貸しは罪になるから返すしかないって」
涙声で、とつとつと語られる優の言葉に、和彦は頭が真っ白になりそうだった。それでも何とか動揺を抑えて話に耳を傾けていた。
「それで私……。パパ活しちゃって。ご飯食べたり。そういう関係にもなって。その人は全部知ってて。でも、もう続けたくなくて。限界で……。何の不自由もなく大切に育ててもらったのに。ごめんなさい」
優は両手で顔をおさえて泣きじゃくった。23歳になった可愛い自分の娘が、そんな責め苦にあっていたなんて。それに気づいてやる事もできずにいたなんて。和彦は全てを呪いたい気分だった。
「元カレとのデータは全部消したし、また連絡取るの嫌だから、自分で返していくことにした。パパ活した人には家を知られてるから引っ越そうかと思う」
なんとか話し終えた優に、和彦はどんな声をかけてやれば良いのか不甲斐なさを感じた。そして出来るだけ感情的にならぬよう努めた。
「過去のことはいい。この先、優が普通に生活できるようにすることが大切だ。ただ。なんで相談できなかったんだろうな。知られないで済めばいいと思う気持ちは分かる。でももし。頼りにならないとか、相談しにくい親だったなら、それは謝る」
和彦は悔しさで震えそうな声を、奥歯を噛みしめ飲み込んだ。
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