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純喫茶「古城」
男は指定された純喫茶古城にやってきた。そこは上野に点在する純喫茶のひとつで、鏡の張られた壁と赤いコールテンの椅子が昭和を保っていた。
案内された席に着いた男は、周りの異様さに気が付いた。窓側にいる客以外は、柄の悪そうな若者たちだった。若者といっても年齢は男の半分ほど。25歳くらいだろうか。
男がメニューに手をかけると、目の前に若者が一人座った。男は顔を上げずにメニューを見ていたが、その視線は意味なく写真だけを追っていた。
「約束の物は?」
「本当に約束は守ってくれるんだな」
若者の言葉に合点がいったのか、男は鞄から銀行名の入った封筒を出してテーブルに置いた。若者は封筒の中身を確認すると、別の若者に目配せした。
「あんたか俺の殺人を依頼したのは」
目配せを受けた若者が男に近付くと、他の若者もぞろぞろと男を囲んだ。どうやらリーダー格らしかった。
「え? 殺人? な、なんのことだ? このお金で約束を守るって」
「そうだよ。あんたを見つける為に、俺らが依頼を受けたんだよ」
「いったい何をいってるんだ!」
男は封筒を奪い返そうとしたが失敗し、鞄を抱えると店を出ようとした。しかし若者たちに囲まれたまま、何処かへと連れて去られてしまった。
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