逢魔が時、賽の河原で。

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 彼女を初めて見かけたのは、早春の冷たく暖かな風が吹きはじめたころ。通路沿いの骨ばった桜の枝には蕾が萌え始め、日に日にふっくらしはじめた、その日だった。  堤防通路沿いに佇む地蔵菩薩像に気がついて、なんとなしに手を合わせて。ふと河川敷に目をやると滔々と流れる川の手前、少し薄汚れたピンクのジャンパーを着た小さい背を丸めて、河川敷で石を拾っていた。  ここら辺の河川敷は山が近いこともあってか石が多く、山から流れてきた時に削られた石たちは、河川敷にたどり着く頃にはすっかりと角が取れて丸くなる。  最初は、河川敷の滑らかな石を集めにここにきているのかなと思った。だからあの女の子も、すぐ帰宅すると思っていた。だけど彼女はわたしが堤防道路から住宅街への道を曲がるまで、ずっと石を選んでいた。  子どもだけで危ないなぁ、川に落ちなければいいなぁ。  彼女を案じながらも、わたしは帰路に着く。  次に彼女を見かけたのは、桜の蕾が割れて花が咲きはじめた土曜日。  しばらくしたらこの堤防通路はちょっとしたお花見スポットになる。満開の桜も好きだけど、わたしは咲きはじめた桜も好き。だから、ひと足さきにお花見がてら散歩をしようと、彼を誘って堤防通路を歩いていた。  お地蔵様に手を合わせ、ふと川の方を振り返った。すると、また河川敷にあの女の子がいた。  今度は石を積んでいる。  不思議な光景にわたしはふと足を止めて彼女を見下ろしていたが、彼と一緒にいたから、その日は声をかけなかった。  しかし、堤防行くたび決まった場所で、彼女は石を積んでいる。  ざんざんと川が流れるそのそばで、彼女は他の人に話しかけられる気配がない。  まるでわたしだけが、あの子が気になっているようだった。  あと五回、河川敷であの子を見かけたら声をかけよう。  そう決めて、今日がちょうど五回目だった。  桜はもう全て散り、若葉を萌え茂らせていた。
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