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入園してすぐ脇目もふらずゴリラの展示施設に向かう。
彼もまた私が来るのを待っていたかのように、ガラスの向こうで仁王立ちしていた。
ニシローランドゴリラ。隅っこの看板にそう書いてある。ということは彼こそがゴリラゴリラゴリラその人、いや、そのゴリラだ。看板をよく見ると、「ゴリラ=ゴリラ=ゴリラ」とは「Gorilla(属名) gorilla(種小名) gorilla(亜種小名)」という意味であるとの記載も。
分かるようで分からない。だからもっと知りたい。他の種類のゴリラは居ないのか。
周りを見渡した時、ふと、見覚えがある顔が目に入った。まさかと思いながらも思い切って声をかけてみる。
「あの、もしかして吉川先生ですか? ゴリラ道の」
「いかにも。私はゴリラ研究家・吉川霊長類です。あなたは?」
「千葉陽子と申します。今朝『私の道』を拝見して、思わず声をかけてしまいました」
「なるほど。ということは、ゴリラに興味を持っていただけたのですね?」
そうなのかな。うん、きっとそうだ。私はうんと頷いて「他の種類のゴリラは居ないんですか?」と尋ねてみた。
「残念ながら、ここに限らず日本の動物園で暮らしているゴリラは全てニシローランドゴリラなので、他の種類は見られないんですよ」
「そう、ですか」
俯き呟いた私に、吉川先生は「表向きは、ね」と続けた。
「マウンテンゴリラ、クロスリバーゴリラ、ヒガシローランドゴリラは確かに居ません。しかし、ゴリラ道を極めすぎた私は、この日本でいくつもの新種ゴリラを発見しました。そしてそれらは今、まさにこの動物園の中でも見ることができますよ」
「良ければ案内しましょうか?」という吉川先生に、私は大きく頷いた。
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