ゴリラ!ゴリラ!ゴリラ!

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 数分歩くと動物の展示ゾーンを抜け、お土産を購入できる店舗が並ぶゾーンに辿り着いた。  吉川先生はゴリラ道の第一人者らしい真剣なまなざしでお店に出入りする人々を観察している。やっぱり次のゴリラもそういう感じなのだろうか。  しばらくそうしていると、店舗から大荷物を抱えたおばあさんが出てきた。お土産用に後先考えず買いすぎてしまったのだろうか、辛そうに顔を歪めている。  そこに一人の若い男性が現れた。 「おいおい、大丈夫かよばあさん!」  おばあさんに声をかける優しい男性。吉川先生はあろうことかその男性を指差し、断言した。 「あぁ、あれはゴリラですね」 「えぇ……どう見てもただの優しいお兄さんですよ」 「まぁ、見ていてください」  吉川先生に言われた通り二人の動向を見守る。  男性はおばあさんと何言か交わした後、その荷物をひょいと受け取り軽々片手で持ち上げた。 「ありがとうねぇ、お兄さん」 「へへっ、これぐらい楽勝さ」  そう言って男性は荷物を持っていない方の手で自分の胸をどんと叩いた。 「ほらっ! 見ましたか!?」  吉川先生の急なテンションアップに私はびくっと肩を揺らす。 「な、何がですか?」 「ドラミングですよ! ゴリラが自分の胸を叩く仕草のことで以前は威嚇のための行動と考えられていましたが実はその逆で本当は無駄な争いを避けるための行動であることが最近の研究で明らかになったんです。  さすがゴリラ、心優しいですね」  怒涛の勢いで捲し立てられてもう何が何だか分からない。分かったのはただ一つ、あのお兄さんもゴリラなんだってことだけ。 「ち、ちなみに、学名は?」なんとか絞り出した私に吉川先生はフンと鼻を鳴らした。 「ゴリラ=ゴリラ=カッコツケですね」 「酷すぎるっ! 純粋な善意かもしれないのに!」 「あるいはゴリラ=ゴリラ=ギゼンシャですかね」 「うわもっと酷くなった!!」
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