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その後の道中もあちらこちらでゴリラ認定する吉川先生を引き摺りながら、なんとか園の出口に辿り着いた。(主に精神的に)すっかり擦り減った私は疲労と安堵の入り混じった溜息を吐く。
なんというか、ただゴリラゴリラゴリラについて知りたかっただけなのに、ずいぶんと面倒な思いをするハメになってしまった。おまけにこの後学校をサボったことで先生や親からの説教が待っていると思うと後悔の念ばかりが襲ってくる。
なんでゴリラに興味持っちゃったんだろう。ゴリラ道なんかに踏み出すんじゃなかった。
出口のところで、サングラスをかけた怖いお兄さんと係員の人が揉めていた。
「すみませんお客様。どうかご理解ください」
「いいから金返せや! こっちはパンダ見るために金払ったんだ!」
「そうおっしゃられましても、パンダがうちの園に居ないことはホームページ等でも確認できることでして……」
「あぁん!? 俺が悪いって言いてぇのか!」
うわ、嫌な客。最悪だ。私はこれ以上面倒に巻き込まれまいと足早にお兄さんの脇を通り過ぎた。ちらと振り返ると、吉川先生が何か考え込むようにお兄さんの方を見つめている。
「せ、先生。早く……」
嫌な予感がした。
「あぁ。千葉さん、これもゴリラですね」
予感は当たってしまった。「あぁん!?」とお兄さんが凄む。
「学名は、そうですね……ゴリラ=ゴリラ=クソムシ、といったところでしょうか」
「んだとコラァ!」
お兄さんは怒鳴り、吉川先生めがけて躊躇なく殴りかかった。私は「きゃあ!」と悲鳴を上げて手で顔を覆った。
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