ゴリラ!ゴリラ!ゴリラ!

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「痛ててっ!」  聞こえてきたのは吉川先生ではなくお兄さんの方の声だった。おそるおそる指の隙間から覗き見ると、吉川先生が片手でお兄さんの手首をがっしりと捕まえている。 「ご存じですか? ゴリラの握力は約500㎏。加えて、」  吉川先生が手を離すとお兄さんは手首を押さえてうずくまった。先生は間髪入れずに両拳を握り、地面にガンと突き付けて4足歩行のような体勢になる。 「これがゴリラのナックルウォーキング」  先生は呟くと同時に4足でぐるぐるとお兄さんの周りを駆け回り始めた。残像が見えるほどのスピード。お兄さんも私も、そして係員まで、その場にいる全員があっけに取られてぼけっと佇んでいた。  突然、先生は両前足、否、拳で急ブレーキをかけた。そのまま方向を変え、まっすぐにお兄さんに向けて突進する。 「そしてこれが……正義のゴリラパンチだ!」  吉川先生の絶叫と同時にお兄さんは後方に数メートル吹っ飛んだ。 「き、救急車!」  係員さんの言葉に、私は慌ててケータイを取り出し119番通報をした。
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