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救急車に乗せられお兄さんは去って行った。実はあの後、お兄さんの怪我の状態などから救急隊員だけでなく警察も出動する事態になってしまったが、係員や私の証言から吉川先生の行為はなんとか正当な自己防衛の範囲と認められた。
ただし今後はやりすぎないようにときつく釘を刺されていたけど。
「あの、先生」
ようやく騒ぎがひと段落したところで、寂しそうに立つ吉川先生の後姿に声をかける。先生は「なんですか?」と作ったような笑みを浮かべて振り返った。
「先生って、もしかして」
「えぇ。お察しの通り……私もゴリラです」
やっぱり。複雑な表情を浮かべているであろう私に先生は語りかける。
「ゴリラ道を極めて、極めすぎて……気付いたら、私自身がゴリラになっていたんですよ」
「そうなんですね……ゴリラ道、奥が深いです。ちなみに学名は?」
私の問いかけに先生は大きく息を吸った。怯えるように、だけどどこか誇るように、先生は自身の名を名乗った。
「私の学名は……ゴリラ=ゴリラ=ユメオチです」
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