「磨く」

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「ほぉ、仲睦まじい……って、ん?!」  彼は私の顔面とスマートフォンの画面を何回も行ったり来たりした。 「これ、何年前ですか?」 「2年半前。付き合い始めたばかりの頃よ」 「いや、これ……別人じゃないですか!」  彼が驚くのも無理はなかった。慣れないアイメイクで腫れているかのような目、色の合っていないピンクのチーク、そしてぼさぼさの前髪。すべてが今と違いすぎていたからだ。隣に並ぶ彼は、きれいに整った短髪とまっすぐな二重が美しい。出会った背景を誰もが考えずにはいられないような、そんな2人だった。 「整形でもしたんですか?」 「しようと思ったことはあるけど、結局しなかった。彼に相談したら、その顔が好きって言ってくれたから」 「優しい人ですな」 「この写真を見ればわかるように、私はとにかく不細工だった。隣の彼、かっこいいでしょう? だからね、私は自分を磨こうと思ったの。メイクして、おしゃれして、私生活もきれいにして。そうして、彼の隣に自信を持って並べる女になろうと思ったの。でもなかなか上手くいかなくて、ようやくそれが軌道に乗りそうな、その時だった。彼が事故で死んだのは」  私は頭の中で彼が死んだときのことを思い出していた。その日は、新しい洋服を買って彼に見てもらおうとしていた日だった。春らしい淡い黄色のスカートだった。それを着て彼に会ったのは病院で、彼はもう、目を開けなかった。 「……これが、最後のツーショットかな。最初の時よりは大分マシになったでしょう」 「確かに……いや、でも」 「ん?」 「正直、今の方が可愛いです」  ストレートな言葉に恥ずかしくなったのか、近藤はどこに落ちるかも分からない汗をだらだらと流している。その姿がおかしくて、私は声を出して笑ってしまった。
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