「磨く」

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「なんですか! せっかく褒めて差し上げたのに」 「ごめんごめん。嬉しくてさ。……そう、私ね。彼が死んでからも、おしゃれも、メイクも、可愛くなるのも、諦めてないんだ」 「もう、彼氏さんは見てくれないのに?」 「彼じゃない別の人が現れるかもしれないでしょ。その人の隣に立った時にも、自信を持っていたいんだよ。それに……」 「それに」 「あなたみたいに、彼ともまた、会えるかもしれない」  私がそう言うと、近藤は自らの色の薄い掌をじっと見た。自分の存在が何者なのか、再確認しているかのようだった。 「僕も、また会えるでしょうか」 「そりゃ会えるよ。いつか彼女さんが来てくれるかもしれないし、もし来ないとしても、人はいつか死ぬから、嫌でもあの世で会うことになる。だから、」 「いつ再会してもいいように、ずっと磨いておかないといけないんだよ。自分も、お墓も」
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